抗VEGF剤は治療反応が得られないCMEの治療選択肢となるかもしれない
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中井義秀 |
ステロイドおよび非ステロイド治療に反応しない患者では、ベバシズマブの硝子体内注射によって手術後の嚢胞様黄斑浮腫が安全かつ有効に治療される。
白内障手術後の嚢胞様黄斑浮腫に対する治療で無反応であった患者は、ベバシズマブの硝子体注入から便益が得られるようである。
こうした注射は、手術誘発性の炎症によるVEGF産生を局所的に制限し、血液網膜関門の血管透過性を抑制する、と東海眼科(津、日本)の中井義秀医師(MD)はいう。
「ベバシズマブはこの血管透過性を抑制し、嚢胞様黄斑浮腫の解消につながった」、と中井医師はOcular Surgery Newsの電子メールインタビューに答えた。
嚢胞様黄斑浮腫(CME)は白内障手術とIOL挿入後に頻繁にみられ、症例の70%までに生じる。大半の症例が介入なしで解消するが、2%程度の患者はある程度の視力喪失を経験するとみられる。中井医師によると、CMEを未治療で放置すると、永久的な視力障害につながることもあるという。
手術後CMEの管理には複数のステロイドおよび非ステロイド治療の選択肢があるが、有効性にはばらつきがあるようであり、特にステロイド治療には安全上の問題がある。硝子体内ベバシズマブ(アバスチン、ジェネンテック社)は、過去の治療に奏功しなかった症例の代替選択肢となる可能性がある、と同医師は述べた。
中井医師は、サンフランシスコで開催されたAmerican Society of Cataract and Refractive Surgeryの会議で当初はデータを発表した。
試験結果
白内障手術に続発したCMEであり、ステロイド薬とNSAIDによる過去の治療に反応しなかった患者12名を対象として、ベバシズマブの硝子体内注射を実施した。この試験では、過去の治療に無反応であることの定義は、初回の介入から1ヶ月にわたるCMEの持続とした。黄斑厚が350 µmを超え、最高矯正視力が20/30未満である患者に1.25 mgの硝子体内注射を実施した。
平均BCVAは、注入前の20/60から、注入から1週間後には平均20/30、1ヵ月後には20/25、3ヶ月後には20/20に改善していた。黄斑の平均厚も改善しており、ベバシズマブ注入前の765 μmから、注入から1週間後には590 μm、1ヶ月後には371 μm、3ヶ月後には225 μmに改善していた。
12名全員が過去の治療後ではBCVAの改善が得られなかったが、ベバシズマブ治療から1週間以内には改善がみられた。中井医師によると、この所見から、抗VEGF治療は実際にCME解消の原因要素であるとの結論が支持されるという。
「CMEはベバシズマブの硝子体内注射で改善し、こうした改善は自然的な回復ではないと判断された」、と同医師は述べた。
治療は十分に忍容され、硝子体内ベバシズマブ注入に伴う有害作用は報告されていない。
「白内障術後のCMEであり、ステロイドやNSAIDに反応しない場合は、ベバシズマブの硝子体注入が視力改善に有効な治療である」、と中井医師は述べている。–— Bryan Bechtelによる
- 中井義秀医師(MD)の連絡先は、東海眼科、〒514-0009三重県津市羽所町399, 電話; +059-225-898;fax: +059-228-8111;電子メール:tokaieye@mint.or.jpである。中井医師は本記事で考察される製品に直接的な金銭的利益を有しておらず、言及されるいずれの企業からも顧問料を得ていない。
抗VEGF薬がこのように有効であった点は病態を考える上で興味深い。Avastin®が、適応外投与で、しかも抗がん剤であることを考えると、中井氏が最後に述べているように、ほかの治療で無効であった症例に、十分なinformed consentと倫理委員会等の許可を得、脳血管障害や心筋梗塞等のハイリスクの症例を除外して使われるべきものと思うが、日本において現時点でケナコルトも手に入りにくい状況においては、やはりひとつの選択肢になるであろう。この有効性を見ると、黄斑浮腫について眼科用抗VEGF薬の認可が待たれる。ただし、後嚢破損により硝子体陥頓があるような症例においては依然として硝子体手術の選択も考えられるであろう。