Issue: July 2011
July 01, 2011
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stage 3+ ROPに対する抗VEGF剤硝子体内投与は有効

ベバシズマブの硝子体内投与で、急性未熟児網膜症治療に大きな効果との研究報告。

Issue: July 2011
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従来のレーザー治療と比較して、薬物療法では再発率が低いとの結果が得られた。治療効果はzoneⅡ未熟児網膜症(ROP)と比較して、zoneⅠROPで明らかに高かったと著者らは述べている。

"ベバシズマブ投与における最も重要な結果は、レーザーに比べて網膜症を再発させないことです"と、筆頭著者のHelen A. Mintz-Hittner氏(MD, FACS)はOcular Surgery Newsのインタビューに答えている。

アバスチン(ベバシズマブ、Genentech)硝子体内投与療法の使用では、レーザー治療によって引き起こされる周辺網膜の障害を避けることができる。

"基本的に、レーザーは破壊的な治療法で、周辺視野に相当する眼球の前方にも破壊的な影響を与えます"とMintz-Hittner氏は言う。"特にzoneⅠROPでは周辺視野を障害し、しばしば高度近視につながります。"

この研究はNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

患者と試験プロトコール

本試験は未熟児143例の286眼を対象とした、無作為化プロスペクティブ臨床試験で、患者はplus diseaseを伴ったstage 3のzone ⅠROPあるいは posterior zone ⅡROPである。片眼がStage1か2、もしくは4か5であったROPの患者は除外された。著者らは本試験が安全性を評価するには規模が小さすぎるものと述べている。

Mintz-Hittner氏によると、ベバシズマブの硝子体内注射は通常、在胎週数31から44週で発症し、網膜外線維血管増殖を伴うstage 3+ ROPの時点で投与されると最良の治療結果が得られると報告している。

"stage 1あるいはstage 2で投与を行なっても、この時期には新生血管がないためかえって正常な網膜の発達を停止させてしまい、網膜萎縮を起こします"と同氏は語る。"またstage 4あるいはstage 5で投与すると、すでに増殖膜が形成され、網膜剥離が起こりかかっているので、実際には網膜剥離をかえって増悪させることになります。"とも述べている。

研究者らは0.625 mgのベバシズマブを0.025 mL溶液に融解し、硝子体内注射する群に140眼、周辺部網膜へのレーザー照射群に146眼を無作為割り付けした。

結果と結論

zone ⅠおよびⅡROPを合わせた再発率はベバシズマブ群4%で、レーザー治療群では22%であった(P = 0.002)。zones ⅠROPのみをみると、再発率はベバシズマブ群6%で、レーザー治療群では42%であった(P = 0.003)。

zone ⅡROPへの治療効果では統計学的有意差はみられなかった。Mintz-Hittnerはこの差異を、ベバシズマブ治療が有効ではなかったというより、検討した症例のなかでzone Ⅱでの両群の再発数が少なかったことが原因と推測している。

"結果的にzone ⅡROPでの再発は稀で、2種の治療の間に統計学的に有意な差を示すに至らなかった。しかし、ベバシズマブ治療が有効であった傾向はあった"という。

将来多数のzone ⅡROP患者を対象とした検討を実施すれば、統計学的に有意な治療効果を示すことができるだろうと、Mintz-Hittner氏は述べている。

ROP再発までの期間の中央値はレーザー治療群で約6週間、硝子体内ベバシズマブ投与群で約16週間であった。

"再度硝子体内注射を行う必要があるため、より長期にわたり、詳細に経過観察を続けて、血管新生が再発するかを確認しなくてはいけません"とMintz-Hittner氏は言う。

従来のレーザー治療では周辺網膜の血管に恒久的な障害を起こすが、硝子体内ベバシズマブ投与では治療以降さらに周辺網膜への血管伸展が停止することはない。

追加的な効果

ベバシズマブ硝子体内投与はレーザー治療より安価であり、ベッドサイドで2、3分もあれば実施できる。一方、レーザー治療には2時間程かかることもあり、高価な装置を必要とし、特にレーザー手術設備をもつ手術室内にて実施する必要があるとMintz-Hittner氏は言う。

ベバシズマブは転移結腸癌の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けており、加齢黄斑変性症や糖尿病性網膜症などの眼科疾患への使用は現在、適応外使用となっている。ROPへの使用は始まったばかりである。

ベバシズマブは1回の治療にかかる費用は約40米ドルで、ルセンティス(ラニビズマブ、Genentech)の約2000米ドルと比較して、よりコストパフォーマンスが高いとMintz-Hittner氏は言う。

加えて、ベバシズマブ分子はラニビズマブ分子の3倍の大きさであるため、眼内から流出することが少ないと同氏は述べる。

"我々がルセンティスを使用したくないと言うのは、金額のためだけではありません。小さい分子の薬剤を注射したくないという理由のためです"と語る。

患者の保護者はベバシズマブがROPに対する治療としてFDA認可を受けておらず、早産児における長期安全性は確立されていないことを了解する旨、同意書に署名することが要求されるとMintz-Hittner氏は述べている。

"医師はベバシズマブのROPに対する適応外的使用について、施設内倫理委員会を通じてプロトコールを作成するべき"と同氏は語った。 – by Matt Hasson

Reference:

  • Mintz-Hittner HA, Kennedy KA, Chuang AZ. Efficacy of intravitreal bevacizumab for stage 3+ retinopathy of prematurity. N Engl J Med. 2011;364(7):603-615.

  • Helen A. Mintz-Hittner, MD, FACS, can be reached at Robert Cizik Eye Clinic, 6400 Fannin St., Suite 1800, Houston, TX 77030, U.S.A.; +1-713-559-5277; fax: +1-713-559-5290; email: helen.a.mintz-hittner@uth.tmc.edu.
  • 開示情報:Mintz-Hittner氏はBascom Palmer Eye InstituteおよびClarity Medical Systemsから謝礼を受け取っており、Pediatrixから旅費支援を受けている。

PERSPECTIVE

これまでの報告と、Mintz-Hittner氏とそのグループが発表した(プロスペクティブかつ無作為化対照比較試験としてデザインされた)この研究から、硝子体内ベバシズマブ投与は治療を必要とするROPを効果的に退縮させることが示された。この研究結果は期待が持てるものであるが、さらなる疑問も生じている。本報告の著者らも指摘しているが、長期安全性についてはまだ確認されていない。ROP患者群は敏感な年齢集団である。発達途中の小児に対し、硝子体内抗VEGF療法は全体的な成長にどのような影響を与えるのか。また眼の発達の自然経過にどのような影響を与えるのだろうか。(この研究でも、視機能測定に関する言及はない。)加えて、ROP治療における抗VEGF剤の適切な用量は依然として不明である。したがって、これらの疑問点がまだあるために、我々はレーザーも我々の治療方法の選択肢として維持しておかなくてはならない。なぜなら、レーザーは歴史的に、ほとんどの症例で効果があると証明されているからである。しかし、治療を必要とするzone ⅠROPと最も重篤なROPのタイプに対して、硝子体内ベバシズマブ投与は我々の治療方法の一つとして考慮しなくてはならない。

— R.V. Paul Chan, MD, FACS
OSN U.S. 版 医学編集委員
開示情報:Chan氏は本件に関連する金銭的関係を持っていない。