Issue: January 2011
January 01, 2011
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MICS白内障手術は浮腫を最小限にとどめ、視力改善を加速する

MICS群ではIOL挿入のための創口拡大を行っても、術後乱視は少ない。

Issue: January 2011

術後1カ月間の観察から、同軸極小切開白内障手術は従来の白内障手術より安全で効果的と臨床家が報告している。

OSN白内障手術分野編集委員、Rosa Braga-Mele氏(MD, FRCSC)はAmerican Society of Cataract and Refractive Surgery会議において、1.8 mm極小切開白内障手術(MICS)と従来の2.65 mm切開白内障手術を比較した研究結果を発表した。

"同軸MICSは従来の白内障手術と比較して、眼内レンズ挿入のために創口を拡大しても…視力結果を改善しています(する。)"とBraga-Mele氏は言う。"術後視力の回復は迅速で、初期の術後炎症や創口および角膜浮腫も少なく、術後乱視も抑制できることを観察した。"

Braga-Mele氏によると、研究者らは眼内レンズ挿入時に創口拡大を伴う、同軸MICSの安全性と有効性の検討を目指した。

"私は常に、極小切開手術の方が良いのではないかと思っていた。"と同氏は語る。"創口をわずかに拡大する必要はありますが、従来型の白内障手術において、大きい創口を引き伸ばしたり、ねじったりするほうが、より重度の創口の損傷をおこし、創口の整合性を損ない、治癒を遅らせ、術後乱視につながるとの自論を持っている。"

試験デザインと方法

本研究は無作為化(トル)無作為前向き試験で、1.8 mm同軸MICSを受けた20例と通常の2.65 mm切開同軸白内障手術を受けた20例を含んだ。試験参加基準は角膜乱視が1D以下、他の角膜疾患がない、核白内障の症例であり、除外基準は他の眼科手術歴、重篤な乱視、全身性の要因による眼疾患であったと、Braga-Mele氏は説明していた。

"両群は年齢や視力など、術前の背景にほとんど差異はなかったものの、同軸MICS群での白内障グレードは従来型手術群のそれより若干重度でその差は有意でした"と同氏は言う。

研究者らは術前視力、白内障グレード、角膜曲率測定、corneal topographyなどを測定した。

白内障手術は全例をBraga-Mele氏がStellaris超音波乳化吸引システム(ボシュロム社製)を使用して実施し、全例にAkreos AO眼内レンズ(ボシュロム社製)が挿入された。MICS群症例では、眼内レンズ挿入時に創口を2.65 mmに拡大した。

術中に、第三者の観察者が手術時間、超音波時間、エネルギー量、平衡塩類溶液の総量、創口サイズを記録した。

研究者らは術翌日、1週間後、1カ月後に視力、前房の炎症反応、角膜および創口周辺の浮腫、角膜曲率測定、corneal topographyの評価を行っている。

結果と結論

MICS群は従来型手術群と比較して、術翌日の中央角膜浮腫および創口浮腫の発生率が統計学的に有意に少ないと報告された。

さらに、MICS群の平均裸眼視力は術後1週間(P =0.0002)と一カ月(P =0.0041)において、従来型手術群より良く、統計学的有意差が示された。

"特に興味深い点は、2.65 mmに創口拡大を行ったにも関わらず、術後1週間と1カ月の両時点において、術後乱視は同軸MICS群の方が従来型手術群より有意に抑制されていたことです"と述べた。

加えて、MICS症例では使用した平衡塩類溶液の総量も従来型手術群より有意に少なく、その差は統計学的に有意であった(P =0.0006)。灌流液の使用量が少なくて済むことは、術中の前房内での乱流や障害を最低限に抑制できるとBraga-Mele氏は言う。

"視力の回復はより迅速で、初期の術後炎症や創口および角膜浮腫も少なく、術後乱視も抑制できた。"と同氏は語る。"さらに、手術時間の延長や、術中に使用する超音波エネルギー量の増加はなかった。"と述べた。―Matt Hasson

  • Rosa Braga-Mele氏(MD, FRCSC)連絡先: 245 Danforth Ave., Suite 200, Toronto, Ontario M4K 1N2, Canada; +1-416-462-0393; e-mail: rbragamele@rogers.com. Braga-Mele氏はボシュロム社のコンサルタントを勤める。