September 01, 2010
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1ピース型小切開眼内レンズにより、乱視の誘発を低く抑えて早期の視力回復を実現

眼内レンズは手術時の挿入も容易


ビッセン宮島弘子

アメリカ白内障及び屈折手術学会(American Society of Cataract and Refractive Surgery)の年次会議で発表された研究によると、小切開で挿入できるよう設計された1ピース型疎水性アクリル製眼内レンズを使用すると、手術後の視力回復が早く、手術による乱視の誘発が低く抑えられることが明らかになりました。

この研究では、Hoyaの手動インプラントカートリッジを使用して、水晶体嚢の切開により小切開iMICS1眼内レンズ(Hoya Surgical Optics)がインプラントされました。ただし、近日使用可能になるプリロードシステムではインプラント手順をより容易にできることを、ビッセン宮島弘子MD,(医学博士)は“Ocular Surgery News”の電子メールインタビューで述べています。

研究結果によると、29名の患者の38の眼例において、手術1日後の裸眼での遠見視力がlogMAR視力で0.00をわずかに上回りました。1週間でlogMAR値0.00に到達し、その後1ヶ月間維持しました。矯正視力は、研究期間を通してわずかな変化はあったものの安定していました。

ほとんどの眼内レンズで、予後は良好です。この独特な眼内レンズの長所は、挿入が容易で屈折が早い段階で安定することです。この利点は、術翌日の裸眼視力が良好であるなど手術後の早い視力回復につながります。

乱視の誘発の低下

ビッセン宮島博士は、切開を極小にとどめることにより手術による乱視の誘発を抑え、視力が安定するため、ほぼすべての患者が小切開手術の恩恵を受けることができると述べています。iMICS1 眼内レンズ挿入後の最終的な切開の大きさは、53%で2 mm、21%で2.1 mm、21%で1.9 mm、5%で2.2 mmでした。

手術後、患者の角膜乱視に大きな変化はなく、1日後で–0.709 D、1週間後で–0.64 D、1か月後で–0.642でした。概して、手術に誘発された乱視は0.12 Dでした。

3 mmや2.75 mmの小切開手術を十分行う医師は、極小切開に挑戦するべきです。手術法は同様です。しかし、切開幅が30%小さいことは細隙灯顕微鏡検査で明らかで、惹起乱視の軽減につながります。

手術法

この眼内レンズの挿入技術は簡単です。水晶体超音波乳化吸引術は小切開で行われ、眼内レンズは水晶体嚢に挿入されます。この研究では、1.8-mm ~ 2.2-mmの耳側切開、5-mm ~ 5.5-mmの前嚢切開を行いました。

1ピース型レンズは、毛様溝挿入が必要な患者には使用してはなりません。チン小帯が弱い、水晶体亜脱臼または水晶体脱臼、処置中の後嚢破嚢などの場合は、他のレンズを使用する必要があります。

水晶体嚢内での眼内レンズの挙動は、レンズの素材によって変わります。この眼内レンズはAcrySofレンズ(Alcon)よりも眼内での広がりが遅く、このことは長所にも短所にもなり得ます。

眼内レンズを挿入するには、カートリッジを眼内に入れてレンズを押し出します。レンズ挿入後の成績を良好にするには、執刀医が理想的な挿入方法を熟知していることが重要です。

切開部位にカートリッジを挿入し切開のトンネルを経路として使用するWound-assisted法は、この眼内レンズには適合しません。2 mm未満の切開サイズを通り抜ける超音波チップやスリーブなどの器具がない場合は、2 mmまたは3 mmのより大きい切開を通して、現在の技術のもとでレンズを挿入します。

トーリックデザインのiMICS1眼内レンズは日本国内で臨床試験中であり、来年にはヨーロッパで使用できるようになります。Stephanie Vasta記

  • ビッセン宮島弘子MD,(医学博士)PhD,(博士)の連絡先は次のとおりです:東京歯科大学水道橋病院眼科 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-9-1803-3262-3421 電子メール: bissen@tdc.ac.jp.